考える物置

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034 クレイジー・Dの悪霊的失恋(1) 感想(東方仗助への愛情を中心に)

 クレイジー・Dの悪霊的失恋 第1巻を読んだ。

 私はというとかつてジョジョの奇妙な冒険の熱狂的なファンだったわけですがジョジョリオンは全巻読んだものの「ドライブ感が、良いよね…?」という感想でしばらくジョジョから遠ざかっており、熱は冷めきっているもの。そんな目線でスピンオフ(特に大好きなジョジョの) に過度な期待をしてはいけないと思いつつ「どんなもんかいな」と読んでみた。

 まず、作画は『ノー・ガンズ・ライフ』のカラスマタスク。序盤だけではあったけれども単行本を買って読んでおり、画力とハードボイルドな作風が魅力的であった。どんなジョジョを描くのかわからんが、画力は少なくとも足を引っ張る要素にはならんだろう。

 さて、物語は承太郎一行とDIOの戦いの10年後、1999年の3月から始まる。かつてペット・ショップを仕込んだ調教師がおり、その調教師はDIOの元から逃げ出そうとして殺されたとのことだが、その調教師が仕込んだ1羽のオウムがいなくなった。そのオウムの捜索について、いまだにDIOを恐れ、呪縛から解放されないホル・ホース調教師の母親から依頼を受ける。ホル・ホースボインゴの予言を頼りに日本はM県S市杜王町へと発つのであった。ホル・ホース杜王町東方仗助花京院典明のいとこの花京院涼子と出会って、DIOの呪縛に悩まされながら、当然のようにスタンド使いだったオウム捕獲のために奮闘していく(のでしょう) 。

 まあここまで書いてきて思ったのは話については1巻だけじゃあなんとも言えんよね。ということでそれ以外の部分での感想だ。

 まず舞台は承太郎一行とDIOとの戦いの10年後、1999年3月の杜王町、語りべはホル・ホースとなる。時系列としては仗助は高校入学前で承太郎と出会う直前だ。まだギリ中学生。ホル・ホースのエンペラーを見た時にはじめて『同類』に出会った反応をしており、本編で承太郎と出会ったときにスタンドに対して過剰に反応していなかったので、なんとなく辻褄は合うみたいだ(それでもこれから次々とスタンド使いと出会っていくだろうから、アクア・ネックレスをボトルに捕まえた時の「スタンドっつーの?つかまえたッス」みたいなリアクションとは齟齬が出ていくだろう。これもまたいわゆるひとつの一巡後の世界だ)。

 それから、いかんせんどーも仗助のキャラ描写が雑じゃないのかね?というのが気になって気になってしまう。リーゼントスタイルを貫く仗助がホル・ホースのカウボーイスタイルに共感する描写があるものの、それだけでホル・ホースを「ホル・ホースの兄貴」と呼ぶのはいささか急では。承太郎を「兄貴」というには抵抗はあろうが(兄貴肌ではないし) 億泰や康一を「相棒」とは呼ばなかったわけだしな(友達をそんな風には呼ばないか。土竜の唄の読みすぎか) 。

 まあ何はともあれ、仗助っていうのは「急にキレるアブない奴だけど、クレイジー・ダイヤモンドという能力に裏打ちされた自信と、とぼけた愛嬌と、ほんの少しのジョースターの血統らしい上品さのある、チンピラ男子高校生」だと思うんだけど、今作の仗助は「便利にクレイジー・ダイヤモンドを使う傲慢で粗暴なチンピラ感」が強い(ただのスタンド使いのチンピラじゃねーか。しかもブン殴ったやつ治ってねーぞ。まあ基本髪型をイジられてキレてブン殴ってるので治らない理由は一定理解できる。キレてなければそこそこ治せる感じだったよね?) 。本編でもアンジェロが強盗を操って人質に取ったコンビニ店員の腹もろとも貫いて強盗の腹に刃物を埋める、ハイウェイ・スターに追いかけられて乗ったバイクで減速できないから轢きそうになったベビーカーをブン殴って即座に直しなんとかするといったムチャクチャなことをするけど、ある程度冷静な考えがその裏側には感じられ(前者は髪の毛をバカにされてブチ切れているとしても俺は少なくともそう感じたものだ)、とりあえずブン殴るけど直すからOK、みたいな描かれ方をする本作の仗助は好きになれなさそうなタイプのキャラクターだ(なお、そこをホル・ホースに早速たしなめられてたりもする。今回のスピンオフの中で多少成長するのかもしれないけど) 。あるいは仗助のキャラクターを説明するためか、髪型のことをしょっちゅうイジられてキレてるのも原因か。

 まあそんなわけで現時点ではイマイチ乗り切れないジョジョのスピンオフ作品。「ノー・ガンズ・ライフを描いていたカラスマタスクが描くエンペラーをメギャンと出すホル・ホース」というのはひとつ面白ポイントかもしれない。今後「クレイジー・Dがどう悪霊的な失恋をするのか」半分期待。以上。